まこ亜美(セラムン)とフェイはや(なのは)を中心にSSやらを扱っています。 百合発言などがあるので、苦手な方はバックすることをオススメします。

空と海の交わる空間(5)

それじゃあいってみよー







駐輪所に滑り込み自転車に飛び乗る。
焦って鍵が入らなかったので強引に押し込んでねじあけた。少しひん曲がってしまったけれど、まぁまだ使えるだろう。
ペダルを踏み込み闇の中へ走り出す。



どうしてあのときちゃんと聞かなかったのだろうか。
自分のバカさ加減が頭にくる。

レイに殴られた頬が今頃になって熱を持つ。あまりの痛さに涙が出そうになった。






走っている間ずっと仲間の言葉がリフレインしていた。

どうしてと言われてもわからなかった。
ただそれが正しいと思った。それだけで。
それがきっと彼女のためになると思っていた。信じていた。

彼女のためと言いながらしていたことは全て己を守ることだったのか
全て裏目に出てしまったのだろうか

出口の見えない迷宮の入り口をまたくぐろうとしている自分を止める。
今はそんなこと考えている場合ではない。



彼女の家の前まで行ってみようとしたが誰もいない気がしたので、急ブレーキターン。
道路に黒い跡が弧を描く。
彼女の行きそうな場所を思い浮かべながらペダルをこぐ。不安に押し潰されそうで、思いっきり息を吐いて落ち着こうと試みた。


正直行き先に検討なんてついてないけれど、体は目的地を知っていて。
まるで彼女とシンクロしているよう。
考えるのではなく心が感じていた。
ここまで深く繋がった絆に、断ち切ることなんて出来ないんだと自然に悟っていた。









切れ切れに吸った空気に塩の匂いした。
見えてきた目的地は彼女と一度だけ行っただだっ広く青い世界。
今は群青のような色で闇と溶け合っているようだったけれど、確かにあの場所だった。


『水って無条件に安心するの。私の全てを受け入れてくれるような』
そのとき彼女が言った言葉を思い出した。
あの時はただ、さすが水の戦士としか思わなかったけれど、今はその言葉が酷く危険なものに感じてしまう。









徐々に大きくなる海に一際目立つ青が見えた。
砂浜に乗り込むと自転車の制御が上手くいかなかったから、転びそうになったその拍子に自転車を蹴り飛ばしていた。後ろのほうで鈍い音をたてる自転車だったモノ。きっともう使い物にならないだろう。けど未練なんてない。吹っ飛ぶ鉄の塊の反動を利用してそのまま海に駆ける。



そこには腰ぐらいまで水に浸かった彼女がいた。



「亜美ちゃん!何してんだよ!風邪ひいちゃうだろ!」



声をかけながら自分自身もジャブジャブと闇に足を踏み入れる。
久しぶりに彼女の名前を呼んだ気がした。

近づくとこちらの存在に気がついたのか彼女が振り返った。
虚ろな生気の感じられない瞳で。その瞳は世界のなにものも映していなくて。




彼女は還ろうとしている
そんな予感がした。

そんなのはごめんだ。彼女をいかせてなるものか。
必死に彼女を抱き寄せると虚ろな瞳がこちらを見上げてきた。




「ごめんね……まこちゃんが、我慢してるのに…私、またすっぽかしちゃった…」




何てことをしてしまったのだろう
この言葉を聞いた瞬間全てを後悔した。



「でも…だめだった…まこちゃんがいなきゃ……ダメだった」



今にも闇に飲まれてしまいそうな儚さに、譫言のようにしゃべり続ける彼女の姿に自然と涙が溢れる。
必要とされていた。なのに必要とされてないと思い込んで眼を背けていた。被害者ぶって、ただの子供だったのだ。
そしてこんな小さな背中に、重い枷を背負わせてしまった。






「守れなくて…ごめんっ…」



あの日自分がなにを謝ろうとしたのかわかった。
また約束を破ってしまった。一度目は前世で、二度目はD地点で、そしてこれで三度目。
まったく、何回破れば気が済むのだろうか。

痛いくらい抱きしめていると、徐々に彼女に体温が戻ってくるのがわかる。
眼にも光が戻ってきているようだ。




「私の隣はまこちゃんじゃなきゃ…」



泣きながら頷いた。あの日の彼女のように、ただ頷き続けた。
彼女が発する言葉はすべて自分が考えていたことで。考えていることも、悩んでいることもまるで一緒だった。


きっと自分の決意なんて彼女にはお見通しだったのかもしれない。
それを知っててなお、その考えを尊重してくれた。
結局彼女に依存したままだったのだ。そして傷つけた。


互いが互いを優先しようとした。なんて不器用なのだろう。










ぽっかりと空いてしまった心の席
それを埋めようとするかのように、きつくきつく抱き合い大声で泣きあった。

















真っ暗な空と海が交わった空間で。


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