まこ亜美(セラムン)とフェイはや(なのは)を中心にSSやらを扱っています。 百合発言などがあるので、苦手な方はバックすることをオススメします。

頂いた!頂いた!!

頂いたよ!!
ysk様から頂いたよ!!

しっとりフェイはや!


雨のち曇りのち晴れ


 雨が、降っていた。見た目よりも強く多く降っていた雨粒も、今はもう止んでいた。
 なのに、一緒に歩く彼女は雨上がりの空に向けて傘を差したままで。実は私もその中に入っていたりするけど。
 目の前のマンホールへ向かって、せーので二人揃って跳ぶと、水が跳ねて靴を濡らした。
 顔を見合せると、おたがいに笑顔が零れた。

 『踏むところを決めて帰ろう』と、突然の提案だった。

『踏むところ?』
『うん』

 いつもと何も変わらない、まぶしい笑顔で。

 アスファルトの黒い所以外を、二人で傘の中、辺りを探して。
 正面に伸びる歩道。ルールを決めたはいいけど、それに当てはまる所が見当たらない。

『マンホールはセーフで』

 このままじゃ進もうにも進めないから、彼女が妥協案を出してくれた。何だかんだでこの後にもいくつか踏んでいい所を追加したりしたけど。
 我ながらどうして真剣にこんなことをしてるんだろうと思わなくないけど、何も言えない。彼女が何も言わないから。

 あんなことがあったのに、笑うから。



 放課後のことだった。
 彼女は一人で先に帰ってしまった。『用事があるから』と。
 どうしてか、なんでかは分からないけど、胸騒ぎがした。
 みんなには先に帰ってもらい、彼女を探しに歩き出した。普段はあまり行くことのない校舎内のすみっこや、非常階段のところを回ったり。

 なんとなく、校内のどこかにいる気がした。
 なんとなく、人のいない場所に彼女はいる気がした。理由なんてなかった。強いてあげれば、彼女だから。

 歩いて歩いて、さすがに疲れてきたころ、なれ親しんだ髪の色が視界のすみを横切った。

──やっと見つけた。

 雨が降る空の下、校舎裏の、木の下に。

 近づいていくと、彼女は顔を上げた。木に寄りかかって両手でおおっていた顔を。
 すぐに、泣いてたと分かった。
 彼女は、私に気づくと涙を急いでぬぐった。

 なにもなかったみたいに、彼女は笑った。いつもと何も変わらない、まぶしい笑顔。
 胸が、痛くなった。彼女が傷ついて泣いていたのに、何も言えなかった、できなかったことがくやしかった。

 彼女は笑顔のまま、私の手をにぎって、

『帰ろう?』

 そう言って私の手を引いた。

 いつもみたいに、暖かい手だった。



 彼女の心はどうであれ、その呼吸がたしかにこうして続く今日が、とても大切に思えた。

 いつもより足音ばかりが耳元でさわぐ。お互い、次にどちらが話すかで、かけをしてるような静けさ。
 空は雲のすきまから夕焼け色をおびてきて、きれいだった。
 なのに、一緒に歩く彼女は夕焼け色の空に傘を差したままで。その中に私はまだ入っていて。
 彼女は、どこか遠く見ているような、横顔だった。見なれているはずなのに、初めてみた感じがした。

 彼女は、泣いていた。なにかに傷付いて。
 とても優しいから、強いから笑ってみせてくれた。心配をかけないように、私に、みんなに笑って。

 私が見ていたのに気付いたようで、振り向いて笑ってくれた。手を伸ばせば触れられるはずなのに、遠く感じた。

 彼女の笑顔はきっと、誰かの心を許せてしまうものだと思う。それなら、彼女の心は誰が許せるようにするんだろう。きっと、それは私じゃなくてもいいんだと思う。
 だけど、せめてこんな時くらい、自分を許して見せてほしい。
 触れないのが思いやり、そんな言葉を聞いた気がする。そういう場合もあると思うけど、なんて言いわけだ。

 彼女の痛みを知るのが、ただこわいだけ。

 たえなく続く足音。交通量が増えてきた道路。見えてきた橋。遠くから聞こえるチャイムの音。
 結局、なにも聞けないまま、いつもの交差点に着いてしまった。

『また、明日』

 おたがいに笑いあってさよならをつげた。

 傘から一歩踏み出すと、世界がひらけたような気がした。一歩、また一歩と彼女との距離が遠くなる。
 橋の中ほどまできた足を止めて振り向いたら、マンホールの上に立って傘が回ってた。くるくるって。

「    」

 彼女の名前を、呼んだ。
 気がついたら走っていた。先に見えるあの傘の向こう側は、きっとそうだ、信号は赤。

 彼女のあの笑顔が、その心を隠してた。彼女は何度自分を責めただろう。呼吸をするたびに? 一歩進むたびに? たえない問いかけ。
 それでもこうして続く今日を、笑顔でいてほしい。つらいことがあるなら、分けてほしい。それを伝えたい。

 伝えにいこう。

 流れる景色を横目に、あと十数メートル、スピードを上げて全力で走る。

 もう一度、名前を呼んだ。さっきよりも大きな声で、はっきりと。

「    」

 いつもの交差点で、一人ぼっちの傘に抱きしめた。

 振り返った彼女の笑顔が、まぶしかった。にわか雨の空みたいに、雨をふらして。
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